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第1回 赤い酒

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■□■

ノゾミはずいぶん暗い顔で店に現れた。
もうすぐあたし、結婚するかもしれないから、今のうちに三人で飲もうよって、
うきうき呼び出したのはあいつのくせに。

しかし、まさに、その話題こそが暗い顔の原因だったようだ。
「それがね、あの人、
『は…』だったのよ」

「は」のあと一文字を飲み込んで、ノゾミは言った。

「は?」
と、俺が訊き返すのも当然だ。
「だから、は…よ。
頭の」
「ああ、頭の」
「そう、頭の」
なるほど。は…は男らしさの象徴だが、好みは人それぞれだ。俺は納得した顔をして見せたが、ノゾミは違うの違うの、とますます早口でまくしたてる。

「別にそれが嫌だってわけじゃないのよ。
だって、日本人の6割がは…るって言うじゃない。
遺伝だし、本人にはどうしようもないし、
そもそも容姿のことをとやかく言うのって最低だし、
あたし、あの人の髪の毛が好きで結婚したかったわけじゃないもの」

「うん、髪の毛と結婚してもしょうがないしね」
と、俺は言う。
我ながら意味のないことを喋ってると思うが、誰がいるやら分からないこのバーで、それ以上、『は…』の話題を大声で喚きたてるのは止めようぜ、というメッセージをこめたつもりだった。



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